わたしは10月7日になんばパークスシネマにて、 ヨン・サンホ監督のアニメーション映画 『ソウル・ステーション/パンデミック(英題：Seoul Station)』を観賞した。 実写映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚となっている今作は、 ヨン・サンホ監督の社会への批判…… more 的な眼差しがより凝縮されていると思った。 ホームレスの高齢男性が首を噛まれて息絶えるが、 突然姿を消したかと思いきや、ゾンビとなって他人に襲い掛かったのをキッカケに、 ソウル駅とその周辺で起きた感染パニックの中を、 恋人のキウンに売春を強要される元風俗嬢のヘスンと、 ヘスンを探す父とキウンが逃走していく展開となっている。 わたしは先に観賞した『新感染 ファイナル・エクスプレス』と 今作を一連のタイムラインとして繋げて観てみたいと考えていた。 上映中はハラハラしつつも緊張感を持って観ていたが、 エンドロールが終わり、照明が再び灯るとわたしはグッタリしてしまい、 便所に駆け込むや、次は泣きそうになった程だ。 ホームレスの老人が誰も助けてくれずに死んでも、 「ホームレスは臭い」として民衆は嫌悪し、 ゾンビが増えても警察も結局信用ならない、 軍隊は遮二無二発砲してしまうという展開から、 平時もそうだが、緊急時にはより一層権力は民衆に対して凶暴になるし、 「家に帰りたい(だが帰る場所がない)」という ホームレスのおじさんやヘスンの悲しき叫びなど、 誰も尚更聞いてくれる筈もないということを、わたしは再確認するのだ。 ゾンビに噛まれて自らも感染した者にも、帰れる場所、 つまり家、家族、大切な人間関係があっただろうとは、 観賞中にはなかなか意識できないかもしれない。 中にはホームレスのおじさんやヘスンのように、 自らの家、或いは安らげる場所を失くした者にも社会は徹底的に冷酷である。 高級マンションのモデルルームと最底辺に喘ぐ人間という、 本来ならば接点がない筈の状況も然りだ。 ヨン・サンホ監督は韓国社会への批判的視線を作品に込めているが、 もしも日本で今作同様の感染パニックが起きれば、 もっともっと残酷な事態になるのは間違いなく不可避だ。 社会も人間も挙って冷酷卑劣だからだ。 【参考記事】 Review 『ソウル・ステーション　パンデミック』 ～新・悪意の映画作家、ヨン・サンホの真骨頂 (シネマコリア 2017年10月5日) ヨン・サンホ(監督)『ソウル・ステーション／パンデミック』。『新感染～』の背景だった韓国の社会問題が前面に押し出された帰結として、観てる間「世の中クソだな」「地獄へ落ちろ人間ども」の連続。そんな世の中で家を失うということについて考えながら、家路を急ぐ。クソ野郎にはなりたくないな。 pic.twitter.com/qEAzPWnCmf— 傘下逆 (@sakasaka) 2017年10月4日 ヨン・サンホ(監督)『ソウル・ステーション／パンデミック』。このインタビュー記事によると監督は「今敏監督の初期のリアリズムあふれる作品が大好き」とのことだけど、本作を観ると納得しかない。階段を上るシーンとかオマージュとしか思えない。 https://t.co/Ic4H6YfoOW— 傘下逆 (@sakasaka) 2017年10月4日 close

movie review『ソウル・ステーション/パンデミック』