3月中旬、済州島空港に着くと雨。雨が降ったり止んだりの中訪れたのは冬栢東山(トンベクトンサン）湿地です。空港から車で約50分、島の東部の善屹里（ソンフルリ）に位置し、溶岩台地に常緑樹林がうっそうと茂るコッチャワル、ラムサ-ル湿地保護地域に指定されたことで知られたところです。&nb…… more sp;コッチャワルは済州島でのみ見ることができる特異な火山地形のことで、済州の方言で鬱蒼とした森を意味する「コッ」と、いばらが生い茂る所を意味する 「チャワル」を合わせた言葉です。森の豊かな生命力と神秘さは言葉で表すのが難しいほど。 冬栢東山湿地センターは、冬栢東山湿地入口にあります。自然環境解説士と呼ばれるガイドさんが常駐していて、希望すれば湿地を案内してくれます。今回は、知り合いの地元の方々がこちらに行くというので車にのせてもらってついていきました。その方々の知り合いがガイドさん。済州島のごく一部にのみ自生するチェジュドコサリサム（済州ハナワラビ）という植物を見に行くことになりました。    こちらが冬栢東山湿地の入口です。溶岩ドームの石と石の上に様々な植物が生えているのですが、温度と湿度が一定に保たれてシダ類が多く生えた暖帯性常緑樹の森です。そしてこのあたり一帯は椿の木も多いため冬栢東山と名づけられているそうです。   道は最近整備されたそうです。道があってもしばらくすると自分がどこを歩いているのかわからなくなってきます。ガイドさんはサッサと歩いていきますが、これはガイドさんなしでは迷う自信あります（笑）このときは雨も上がり、雲と雲の隙間から光が差してきました。風が強めで葉がさわさわと大きな音を立て、どこからか鳥のさえずりが聞こえてきます。光と森の中の影のバランスがとてもよく、癒される風景がずっと続きます。    溶岩ドームの上に森があるので、このようにぽっかりと大きな穴が森のあちこちにあります。冷気がのぼってくる感じ。村の人々はその昔森の木を焼いて炭を作り生活していました。その跡も森の中にあります。そして、もうひとつ。忘れてはならないのが4.3事件の悲惨な記憶を残した場所でもあるということ。1948年から島内で継続して起きた一連の済州島民の虐殺事件は多くの犠牲者が出ました。当時コッチャワルは住民たちの身を隠してくれた場所です。このような穴に隠れていたのですね。     “済州島4.3遺蹟地”とかかれた旗があちこちに立てられています。悲しいことに、ここで多くの住人が虐殺されてしまいました。森の近くにあるナクソン洞には4.3城と呼ばれる施設があります。住民らを強制労働させて統制村を作り、武装隊と連絡を取れないようにしたそうです（現在その4.3城は復元されているそうですが、住民からすると前の姿と違うと批判もとのこと）。     鬱蒼とした森の中へ着の身着のまま、裸足で入り逃げ惑う人々を想像します。椿の花、4.3事件追悼のシンボルでもあります。     こちらの穴、トトゥルグル2003年の調査により、内部には溶岩懸盤、縄状溶岩、アア溶岩（鉱滓状溶岩）などがあり、保存価値が大変高いものとして立ち入り禁止になっています。    木と足元のシダばかりを見てばかりになってしまいますが、木にびっしりと生えた葉のつやや、かわいらしさに足をとめたり。ちなみに、冬栢と呼ばれるこのあたりは、椿の木だらけというわけでもなかったです。木も比較的小さなものが多かったです。     ガイドさんが“あったよ、ここここ”と指さしました。ぱあっと開けて明るくなっている水辺が出てきました。ここが済州ハナワラビの群生地だといいます。韓国の環境部指定絶滅危機種、済州ハナワラビ、ワラビというので食べるワラビの芽だけを想像していましたが、ワラビの葉っぱの状態を知らなかったので一体どんな姿なのか興味津々でした。    こちらです。ん？とっても小さいのです、幅が大きくても４センチほど。シダ植物群の中で“済州ハナワラビ属”という新属新種で、この発見は世界的にもとても珍しいのだとか。学名はMankyuaといい、韓国初のシダ植物学者のパク・マンギュ教授の名前からつけられました。     水の中にあります。水中の根を張らせてそこから新しく増えていくタイプ。梅雨時に芽が出て、湿地から自然と水がなくなっていく春先まで地上で育つ南方系のシダ類だそうです。この植物が育つための条件を満たしたコッチャワルの湿地。自然の営みに驚きます。    しばらく進んで森を抜けると、モンムルカクという湿地に出ました。モン（遠い）+ムル（水）+カク（済州島方言で特定の地域のはしっこを意味する）で、遠いところの端っこにある水という意味になります。2013年5月、湿地を抱く善屹１里一帯はラムサール条約で保護区域に指定されました。ラムサールってどこだろうって調べたらイランなんですね～ ガイドさんの説明を聞きながら、約1時間半歩きに歩きました。とても充実した時間を過しました。    ■冬栢東山湿地センター住所：済州特別自治道済州市朝天邑冬柏路77電話番号：064-784-9445開館時間：9：00～18：00http://ramsar.co.kr/（解説士と歩くプログラムは9：00～16：00の間、３人以上で前日予約が必要、約１時間半、韓国語） close

済州島・冬栢東山(トンベクトンサン）湿地